生きていることの科学

この本は新書としてはあり得ないくらい難しいです。
マテリアルとそれを数学上の概念として抽象化したスケルトンがポイントなのでしょうが、結局マテリアルが何かはわかりませんでした。
新書ということで、わかりやすく書こうとした事が逆に仇になっているかもしれないですね。
というわけでレビューは書けません。ただ、非常に興味深い内容なのは確か(もっと勉強し、いずれはレビューを書きたいと思っています)。
「人間とは何か」という問いに対する、これまでの言説を超越した何かがあります。
一応読むときの注意事項を挙げておきますと
4章構成なのですが、理論そのものを説明しているのは4章のみで1章から3章までは全て前振りです。
3章まではあくまで4章を理解するためのアナロジーなので肩の力を抜いて読みましょう。


郡司ペギオ幸夫の理論は「よくわからないけどなんか凄そう」という印象を与える力強さがあります。
原生計算と存在論的観測―生命と時間、そして原生

原生計算と存在論的観測―生命と時間、そして原生

という本の書評がこのページにあるのですが
この最後に

本書にはわからないところが沢山ある。しかし、考えてもみてほしい。生命をわかるには、数学理論のすべてを動員したところで足りないのは明らかではないか。数学理論のすべてを動員するものこそが生きているのだから。とすれば、本書のわからないところは、私たちも生きているからには、わかっているはずのことなのだ。今後、物事を考えようとする人が、そこから何ものかを汲み出していくことを強く期待する。

「わからないところが沢山ある」って・・・それで書評していいのか!とつっこみたくなるところですが
わからない中にも凄みを感じさせる。それがペギオ理論ということなのでしょう。
「へのつっぱりはいらんですよ」みたいなものですね。
生きていることの科学の帯にも
「彼の話は難しい。でも、その本気の志向が実に魅力的なのだ」(by 養老孟司
とあり、養老孟司も理解してないが何か凄いと思っているようだ、ということが伺えます。


ちなみに、ペギオ理論について一番まとまっている本は多分これだと思われます。

生命理論―第1部 生成する生命/第2部 私の意識とは何か

生命理論―第1部 生成する生命/第2部 私の意識とは何か

本気で理解するなら、下手に新書を読むよりこちらを読んだ方がいいかもしれません。