憲法9条を世界遺産に

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

小生は知らなかったのですが、この本はどうも
大田光が何かのテレビ番組で言った発言が発端みたいですね。
その番組は、大田光の私が総理大臣になったら…秘書田中
見ていないことが、1ミクロンくらい悔やまれます。
以下は本のレビューです。


この本は、9条の理念と宮沢賢治がリンクしているというスタンスの元、宮沢賢治の話から入っていますが
そういったアナロジーを全て取っ払い、個人的にポイントだと思った点を整理すると

  • 9条のような憲法が存在することは奇跡であり、そういう意味では白神山地などの世界遺産と同じように保護をする価値があるものだ
  • これまで9条をめぐりさまざまな紆余曲折があったが、その理念自体は古代から人類が持ち続けているものであり、存在していること自体に意義がある

の2点だと思います。
「理想論でいいじゃないか。無くしたら二度と復活し得ないものなのだから残しておこうよ」
といったところでしょうか。
9条を残す意義は何か?というところを端的に示しているという点では小生の評価は高いです。
護憲論者の主張としてこれ以上のものはないのではないでしょうか。


ただ、小生はそもそも小沢派で「国連維持活動のための軍隊は保持できるよう、9条の第2項を改正しよう」
という案に賛成なのですが、この本を読んで、その意見を変える気にはまったくなりませんでした。
「国防のための軍は持たず、国連平和維持活動のための軍は持つ」という理想論
(現実は国防の意味も持ってしまうでしょうから、あくまで理想論)
の方が、国際貢献をする意志がある分、現行の9条よりもより志が高いかと。
どうせ理想論を掲げるなら、より大きな旗を掲げよう、と思いませんか?
9条を盾に戦争地域に対する人的援助を避けてきたのがこれまでの日本外交で
それに対する小沢一郎の歯がゆい気持ちに、小生は非常に共感しています。
大田光中沢新一も、結局これまでの日本外交を消極的にでも許容しているといわざるを得ないわけで
積極的な国際貢献をするべきという意見に対し、あまり関心を払っていないのが残念です。


あと、内容についてケチをいくつか。
まず、石原莞爾と田中智学の話はなんだったんだと。それで大田は本当に納得したのかと。
結局この二人について、ろくな総括をしていないのが残念でした。
二人が好き勝手にしゃべっているので基本的に話にまとまりがなく、体系立ってないです。
中沢新一の「神話は、論理的にしっかりしているけど矛盾も抱えている」という下りなど
学者としてどうなんだ、と思わせる記述も多々見られ(おそらく比喩表現の一種なんだろうけど)
神経質な人が読むと、ちょっとイライラする内容かと思います。