朝まで生テレビ!で学ぶ裁判員制度

テレ朝で毎月最終週、金曜の深夜に放送される朝まで生テレビ
基本的には、論点に対してパネリストがどのような意見を持っているか
に着目するのが正しい見方なのでしょうが
小生は、ニュースでは流れない貴重な事実情報が得られるのが
この番組のウリだと思ってます。
正直、カンサンジュン先生の思慮深げだけど
さんざんしゃべって結局言いたいことは情報公開しろってことだけじゃん!というお話より
関係者、専門家しか知らない事実関係の話をもっと広げてほしいなあ、と。


で、今回は裁判員制度
興味はありつつ、これまで調べてこなかったので
情報を整理するいい機会だと思って見てみました。
思ったほど大した情報は得られませんでしたが、自分の中での論点は非常に明確になったので
その点はよかったです。
まあ、論点は、簡単に言ってしまえば次の3つではないかと。

  1. 量刑まで決めさせるのはやり過ぎなのではないかと
  2. 裁判員制度陪審員制度か
  3. そもそも市民参加によって冤罪や誤った無罪が増えるのではないか

このうち、1についてはパネリストの大半が「やり過ぎ」だと思っている節があり
はっきりいってなんでこれで決まっちゃったんだろう、という印象。
死刑が関わる場合における、裁判員の負担はもちろん
単純な二択ではない集団的意思決定では無難な選択肢が選ばれる保証がないですからね。
最悪、3年後の改正で直してほしいところ。
ただ、その一方で1以外については、現状でいいんじゃないかというのが小生の意見です。


2に関しては、少なくともパネリストの方々は陪審員制度と裁判員制度の違いを
欧米の事例の比較でしか議論できていなかったせいで
なぜ裁判員制度は駄目だが陪審員制度はいいのか、ということについて
信条以上の説明を展開できていなかったですね。
で、裁判員制度の方が明らかに既存の制度に近いわけで
制度改革の基本として、特別な理由がないかぎり
いきなり急進的に変えるより段階的に変える方が望ましいのは当然。


そして、3については、最も強硬に主張していた小林 節先生は集団意思決定理論についての理解が薄すぎます。
刑事事件における現状の問題意識は
「冤罪を如何に減らすか」ということ。ここで裁判員6名が追加されることで
冤罪が逆に増える可能性はどういうシチュエーションかといいますと

  • 一人の裁判官が勘違いし、かつ6名のうち3名以上の裁判員が勘違いする

という状況に限られます。
二人以上の裁判官が勘違いする状況では、現在の制度でも冤罪になりますから考慮する必要はないわけです。


で、裁判官がプロフェッショナルだという前提を置く限り
一人の裁判官が有罪を主張している以上、有罪だと主張しうるなんらかの事実があるわけです。
で、その事実を認識した上で有罪である主観的確率が
ある裁判官では40%だが、別の裁判官では60%だった、とかそういう話なわけです。
すなわち、少なくとも自明な話ではないと。


その上で、裁判員、すなわち一般市民も半数以上が有罪だと判断するような状況なわけですから
常識レベルで考えても、有罪だと考えるのが的外れということはまずないでしょう。
小林先生が、このことを認識した上で「公平性が担保できない」と主張しているとは到底思えません。


結局、丸山元弁護士の認識が一番正しいのではないかと。あの人の意見は

  • 裁判員制度が始まっても、ほとんどの場合裁判官の意見が通るので、現状と大して変わらない

ということで大体あっているはず。
ただ、それでも裁判官のうち2人が余りにも常識外れな判断を主張した場合は
流石に閑々諤々の議論になるわけで
そういうまれな状況に限り、裁判員の存在が意味を持ってくると。
あとは市民に対する学習効果ですよね。裁判員に参加した人々のみならず、他の市民も
「自分だったらこう判断した」ということを
ブログ等々で発表するでしょうから、司法について真剣に考える機会が増えると。
逆に言ってしまえば、裁判員制度にはその程度の効果しかないわけですよ。
なので、「大した効果がないならやる必要ないじゃん」と言われれば、それは一理あると思います。


ちなみに、小生は「とりあえずやってしまえ」と思いますけどね。
裁判員制度を軽く見すぎだって言われそうですが、自分の意見としては
むしろ「裁判官」ってそんなに特別な存在なのかと。
プロなんだから、職業選択の自由の中、その職業を選んだんだから、とは言いますが
仮に全員が嫌といっても誰かがやらなければならないわけで
人を裁くという重い役割を押し付けておいて、俺は関係ないよ、という姿勢は正直取り辛い。
そんな難しく考えることないと思いますよ。いざ裁判員に選ばれて決断に迷ったときは
最悪、裁判官の誰かの意見に乗っかっちゃえばいいわけなんですから。
既存の制度では、全市民が無自覚にそうしていることになるわけですよ。
今まで責任はなかったのに裁判員になると急に責任が発生する、という考え方はおかしいんじゃないかと。